2011年5月20日

6/26 第5回日本カンボジア研究会、発表要旨(7)

個人発表(7)
「上座仏教との関わり方:カンボジアにおけるベトナム人とクメール人の境界に関する一考察」
松井 生子(国立民族学博物館外来研究員)

カンボジアにおいてベトナム人は多数派民族であるクメール人を脅かす存在とされ、クメール人とは異なるものとして本質的・固定的に捉えられてきた。報告者が2005年から調査を続けてきたプレイヴェン州の村でも両者の二分法が存在し、ベトナム人がおこなう祖先祭祀とクメール人が信奉する上座仏教という宗教的実践面での違いが両者を境界づけるものの1つと考えられている。ベトナム人の大多数は(大乗)仏教徒を自称し、読経といった行為にも親和性を持つものの、クメール人を自らとは違う範疇に属す人々であると見るがゆえに上座仏教に接近しようとはしない。しかし上座仏教に距離を置くベトナム人がいる一方で、クメール人と結婚したベトナム人妻が意識的に上座仏教を受容する例や、ベトナム人の世帯がクメール人と親しくなり接近する中で上座仏教儀礼を主催する例がある。本報告ではそれらの事象を詳しく取り上げながら、範疇の認識と実践の往還による「民族」区分の維持、そして両者の境界認識の変化の可能性について考えてみたい。

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