2011年5月20日

6/25 第5回日本カンボジア研究会、発表要旨(1)

個人発表(1)
「トンレサップ湖氾濫原に暮らす住民の生活様式と植物資源利用」
荒木 祐二(埼玉大学教育学部)

カンボジアの中央部に位置するトンレサップ湖は,東南アジア最大の淡水湖である。この湖にはメコン河の水が遡上し,増水期(10~11月)には,減水期(4~5月)に比べて水位が8m上昇し,冠水面積は4倍にまで拡大する。低平な湖岸域に広がる氾濫原は,アンコール王朝時代から地域の経済・文化を支える多様な生物資源を育んできた。しかし,近年では生態系の多くが荒廃し,住民の生活基盤の消失が懸念されている。
本講演では,植物生態学・民族植物学の視点から実施した,氾濫原植生の季節動態と地域住民による植物資源の利用形態に関する調査結果を報告する。減水期の陸化した氾濫原では,湖心側から内陸に向かって,高木林→やぶ状の疎林・低木林→耕作放棄地・耕作地が順に卓越していた。また,住民の住居形態は,水上移動型と陸上移動型,陸上固定型の3タイプに区分され,各々の生活様式と湖の水位変化に応じた植物資源利用(主として薪)を展開していた。

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