2011年5月20日

6/25 第5回日本カンボジア研究会、発表要旨(3)

個人発表(3)
「現代カンボジア農村における農民組織活動の展開と社会関係の変容に関する一考察 -内戦終結以降の開発援助の影響に着目して-」
秋保 さやか(筑波大学大学院人文社会科学研究科国際公共政策専攻)

本発表では、カンボジア南部の稲作農村における農民組織活動と稲作をめぐる農民の経済的実践に関する事例を提示し、 開発の影響下にある農村社会の変容過程を社会関係に着目し議論する。カンボジア農村社会に関する先行研究では、自発的に組織される組織がほとんどない、または組織されても一時的だということが述べられてきた。その一方近年では、寺委員会や葬式組合などの事例も報告されている。
本発表では、開発援助プロ ジェクトを契機に、タカエウ州トラムコック郡の稲作農民によって形成された農民組織活動の事例をとりあげる。この組織は、親族また二者間関係を基盤とし形成されたが、その後の活動の展開過程の中で、全国規模の農民ネットワークが築かれ、それが国内外のNGO、フランスのクメール人組織、企業といった多様なアクターと協力関係を結ぶことにより展開されている。この事例分析を通し、現代を生きるクメール農民が市場経済というシステムや国家に内包されながらも、その中でどのように連帯し、困難を克服しているのかを明らかにする。そして、これまでの社会関係の議論だけでは捉えきれない人々の関係性の広がりが見られることを指摘し、内戦終結以降の社会変容の一側面を示す。

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