2024年6月8日

発表要旨(5)

 劉澤文(LIU Zewen)下関市立大学

「カンボジアにおける中国企業による商業農産物の栽培と輸出―クロチェヘ州における大規模バナナ農園の事例から」

“Commercial Agricultural Production and Export by Chinese Companies in Cambodia: A Case Study of Large-Scale Banana Plantation in Kratie Province”

(発表要旨)

 2010年以降、カンボジアの農産物輸出が急速に成長している。2000年代前半までの農業生産は極めて自給自足的な構造であった(天川 2006)。2010年代以降は、コメやキャッサバの輸出向け商業農産物の生産が拡大した。その要因として、道路整備や灌漑水路の整備による栽培集約化、タイやベトナムからの買付け需要の増加が指摘された(矢倉 2021;高堂他 2021)。

 2010年代後半以降は、バナナ輸出が急増している(ODC)。しかし、輸出農産品の品目変化とその要因は、詳細に検討されていない。本報告は、その主な担い手である中国企業の生産活動に着目し、バナナの生産輸出拡大の要因を解明することを目的とする。

まず、カンボジア税関や国際機関の統計データにより、コメ、キャッサバ、バナナなどの農産品輸出がタイ、ベトナム、中国向けに拡大している貿易構造を分析する。次いで、クロチェヘ州のバナナ農園で実施した現地調査に基づき、中国企業が大規模な農地を取得し、機械化による集約的農業生産によって、輸出向け農産物生産の担い手となったことを明らかにする。