東佳史(AZUMA Yoshifumi)立命館大学
「「面従腹背」から「無気力」へ?―2022-3年カンボジア選挙結果分析」
“ 'False Obedience' or Apathy: Some Statistical Data Analyses on the 2022 and 2023 Elections”
(発表要旨)
本発表は2018年第100回東南アジア学会にて発表した「抵抗」と「面従腹背」の間 ; 2018年カンボジア総選挙結果分析」の続編である。2023年7月23日に行われたカンボジア総選挙は最大野党であるキャンドルライト(CLP)党が参加資格剥奪という既視感のある中、有権者投票行動が注目された。中央・地方幹部逮捕を恐れたCLPはなすすべもない中、与党人民党は2018年の総選挙で見られたような威圧で応じ、与党の勝利が既定路線となった上で高い投票率を確保して選挙の正統性を担保する必要もなしに選挙はただの儀式と変容した。
以上の構造的変化の下、総選挙は実施され、投票率は2018年総選挙の80.32%から78.28%に微減した。そして、CLPが参加できた2022年クム・ソンカット長選挙の80.32%からも減少している。これは約2割の有権者が棄権という「抵抗」を示したとも、無気力とも理解できよう。興味あるのは無効票の増加であり2018年の8.55%から5.34%と減少している。これは2018年では棄権が発覚する事による「嫌がらせ」を恐れた有権者の「面従腹背」すら不可能となった。2022年と2023年選挙結果を統計学的に分析すると2022年にCLPが得票した州での2023年選挙無効票の推移は興味ある結果が見られた。本発表ではNECの公表データとComfrel、NDE、EU等のオープンソースを統計学的分析を基に、2018年に見られた「面従腹背」すらも困難になった現状を検証する。