2024年6月8日

発表要旨(3)

 山田裕史(YAMADA Hiroshi)新潟国際情報大学

「強化されるフン・セン体制―2023年カンボジア総選挙と世襲内閣の誕生」

“The Strengthening of Hun Sen's Rule: Cambodia's 2023 National Assembly Elections and the Birth of the Hereditary Regime”

(発表要旨)

 与党・カンボジア人民党の圧勝に終わった2023年総選挙の直後、フン・セン首相は辞任を決断し、フン・マナエト首相を筆頭に人民党高級幹部の子どもたちを中心とする「世襲内閣」が発足した。なぜフン・センは大方の予想に反して早期の世襲に動いたのか。大幅に進んだ閣僚の世代交代はカンボジア政治においてどのような意味をもつのか。

 本報告は、アジア経済研究所において2023年5~10月に実施された機動研究プロジェクト「2023年カンボジア総選挙―ポスト・フン・セン時代に向けた集団的権力継承」と、2024年2月の上院選挙に関する現地調査の結果に基づき、上記の問いについて検討する。具体的には、2023年総選挙とその後の新内閣を中心とする国家機関および人民党指導部の人事の分析を行う。結論として、閣僚ポストが子世代に移譲されたことでフン・セン「政権」は終わったものの、フン・セン「体制」はこれまでよりも強化された形で続いていることを指摘する。