木口由香
「メコン河流域でのダム開発の現状とカンボジアへの影響」
メコン河流域でのダム開発の多くは、1950年代に計画されたものである。ベトナム戦争や東西冷戦の影響でその多くは実施されなかったが、ここ10年ほどの流域の電力需要の高まりとベトナムやタイ、中国の投資によって複数のダムの建設が同時進行している。カンボジアでは現在、北東部のセサン川で大規模水力発電ダムの建設が進んでいる。最近、メコン河本流のクラティエ県などでも大型ダム建設に向けた調査が始まることが明らかになった。その調査は国内大手企業が実施する。現状の政治状況で言論の自由に大きな制約がかかる中、カンボジア国内では自国のダム計画について議論を控える傾向が強まっているように思われる。
本発表ではメコン河流域でのダム開発の全体像を概観し、その懸念される問題点とカンボジアへの影響、またカンボジア国内の計画について最近の動向をまとめてみる。さらに、カンボジアの人々にダムのネガティブな影響を伝える際の難しさについても話題提供をしたい。