上村未来「カンボジアNGO法制定プロセスにおけるNGOの政治的機能-2008~2015年の動きを中心に-」
2015年8月、カンボジアで活動するNGOの登録を義務付ける「NGO法」が制定された。同法は政府が20年越しで成立させたもので、人々の結社の自由や活動スペースを、縮小・抑圧するものだと批判的に語られることが多い。一方で、法案の内容の変遷、どの条項が、どのように変わったのか(あるいは変わらなかったのか)、また法案の内容が変化した背景には何があったのかについて、整理、分析された論稿はまだない。同法の制定プロセスにおいては、カンボジアを支援する諸外国や関連機関を含め、カンボジアのローカルNGOが中心となって提言活動を行い、政府との対話の機会を設けてきた。当事者であるローカルNGOおよび外国NGOは、この法制定の動きをどのように捉え、何に対して、なぜ異議を唱え(あるいは賛同し)、どのように抵抗(あるいは従属)したのか。
本報告は、NGO法制定プロセスにおける政府と市民社会のせめぎ合いを中心に、野党、メディア、国際機関、諸外国など関連アクターの動きを含めて検討し、カンボジアにおけるNGOの政治的機能の考察を試みる。なお、同法は制定までに20年を要したが、本報告では政府が制定の動きを加速させた2008年以降を中心に検討する。