川口正樹
「1979年~1989年のカンボジア情勢(フン・セン首相の著作に基づいて)」
ポル・ポト政権打倒後のヘン・サムリン政権下でのカンボジア情勢につき、フン・セン首相の著作「カンボジアの10年の歩み 1979年~1989年」に基づき発表する。同書は、フン・セン首相自身が、ポル・ポト政権からの解放後、ゼロと言うよりもマイナスからの国作りにつき、政治・軍事、経済、社会・文化の各分野に関して、自身の経験に基づき経済データを挙げながら著したものである。
フン・セン首相は、同書において、国内ではポル・ポト派と戦いつつ、対外的には、東西冷戦構造の中で、シハヌーク殿下との対話を通じた和平を模索する様子を描いており、ポル・ポト派など敵対勢力や米国や中国に対する率直な思いが綴られている。また、カンボジア和平に向けた当時のフン・セン首相の考えが理路整然と、しかし、堅い信念に基づいて書かれている。
カンボジアは、ポル・ポト政権の虐殺、国連PKO、和平後の復興につき書かれた書は少なくないが、ポル・ポト政権崩壊後の1980年代の資料は少ない中、同国の指導者自身による述作であり、貴重な歴史的史料を提供している。