大坪加奈子
「僧令にみるカンボジアのサンガの変遷」
上座仏教社会を対象とした先行研究において、「世俗的秩序」とサンガ(僧団)によって構成される「仏教的秩序」は不可分の関係にあることが指摘されてきた。そして、世俗権力がサンガの保護と浄化を行い、サンガが世俗権力の支配の正統性を保証するという相互依存関係があるとされる。本報告では、カンボジアにおける世俗権力とサンガの具体的な関係性を検討するため、全国幹部僧侶年次会議資料と僧令に着目する。サンガが新たな形で再生したポル・ポト政権崩壊後のカンボジア仏教に焦点を当て、全国幹部僧侶年次会議資料と僧令を検証することで、サンガ上層部の意図、サンガを取り巻く制度や状況の歴史的変遷について明らかにする。なお、本報告のための調査は「ポル・ポト政権後のカンボジアにおける政教関係の解明」(JSPS科研費 JP16H07035)によるものである。1980年代の文献資料については引き続き収集する必要があり、今回の発表は中間報告となる。そのため、今後の研究推進に向けてのご意見やコメントを賜わる場としたい。