2013年6月9日

6/29 第7回日本カンボジア研究会、発表要旨1

「カンボジア現代史認識の変容―1979年以降の国定教科書の分析を通して―」

新谷春乃(東京大学大学院総合文化研究科)

 本報告の目的は、人民党政権下(1979-2012年)、国定歴史教科書を通して、カンボジア現代史がいかに叙述され、変容してきたかを明らかにすることである。カンボジアでは独立以降、度重なる体制転換の中、その時代に適合するようカンボジア史が捉え直されてきた。独立以来、最長の統治を続ける人民党政権もまた、時勢の変化に応じて巧みに政治的性格を転換する中で、同様の捉え直しをしてきた。本報告が扱う現代史は、その捉え直しの中でも特に変化が著しい。なぜなら、現代史は人民党にとって自らの支配の正当性を歴史的に証明する重要なツールであるからだ。そのため、教科書においても人民党史に沿った現代史叙述がされてきたが、近年その傾向に変化が見られるようになる。本報告では、この現代史認識の変容を、シハヌーク評価とポル・ポトを含む共産主義評価を軸として論じたい。