2019年6月10日

6/30 発表要旨(8)

小坂井真季
(東京大学大学院 新領域創成科学研究科国際協力学専攻博士課程単位取得満期退学)
「レジデンシャル・ケアをめぐるカンボジア政府の政策に関する考察-国連子どもの権利委員会文書から」

KOZAKAI Maki
"A Study of Residential Care Policy in Cambodia: Focusing on UN Documents of Committee on the Rights of the Child"

 本研究は社会的養護をめぐる政策を事例にし、どのようにカンボジア政府がレジデンシャル・ケア制度の整備を進めていったのかを明らかにすることを目的とする。国連子どもの権利委員会(CRC)文書の分析を通じて、カンボジア政府が子どもの権利保護を社会的養護政策に取り入れていった過程を検証する。本研究の結果、CRC勧告を受け入れつつ独自のレジデンシャル・ケア関連政策の整備を行った過程が明らかになった。その一方で、家庭に問題がある子どもに対する対策がなされておらず脆弱な子どもたちが発生する原因そのものが隠蔽されている可能性があること、及び国際的な脱施設化の流れをそのまま受け入れ、レジデンシャル・ケア施設がカンボジアにおいてこれまで果たしてきた役割の評価を行っていないという2つの問題点が浮かび上がった。内戦後にレジデンシャル・ケア施設が果たしてきた役割を評価し、カンボジアでの施設ケアの不適切な点及び適正化のために必要な点を議論する試みに意義があると考える。