2019年6月10日

6/29 発表要旨(6)

井上 航(国立民族学博物館・外来研究員)
「生態学的にみたブラウクルン語の表出的な言葉」

INOUE Ko
"Ecological Perspective on Expressive Words in Brau-Krung Language"

 カンボジアの少数民族クルン人のあいだで話されているブラウクルン語は、同系統のモン・クメール諸語および地域的に近い他系統諸語がそうであるように、表出的な言葉(expressive words: 擬音・擬態語に代表される感覚や感情の表出性が顕著な言葉)が多いように見受けられる。本発表では、環境のもろもろを知覚する身体の視点からブラウクルン語の擬音・擬態語を探った現地調査の結果をもとに、同語の音韻論的な感性という要因と、表出的なフレージングという要因をさらに考慮した発展的な研究が必要であることを述べる。研究の全体的な目標は、クルンの村落にみられる在来的な言葉・声の表現の美学的理解にある。発表者が専攻してきた民族音楽学によるアプローチと、新たに学ぼうとしている言語学的アプローチ(Williamsらの「文法の感性論」: aesthetics of grammarなど)をいかに適切に用いるかというディシプリン上の摸索を抱えながらではあるが、映像・音声データを含む具体的な話例・語例を多く取り上げることに力点をおいた報告としたい。