2019年6月10日

6/29 発表要旨(1)

松井生子 Matsui Naruko
(昭和薬科大学・非常勤講師/東京外国語大学AA研・ジュニアフェロー)
「その後の「上座仏教との関わり方」-カンボジア南東部の村におけるベトナム人の宗教的実践のこの10年間の変化」

Matsui Naruko
"Vietnamese Participation in Theravada Buddhist Rituals: Changes in a Cambodian Village for the Past Decade"

 報告者はプレイ・ヴェン州ピアム・チョウ郡の村での2005年から2010年までのフィールドワークをもとに、2011年の日本カンボジア研究会にて「上座仏教との関わり方」というタイトルで、調査村のベトナム人定住者の宗教的実践と民族間関係についての報告をおこなった。道教や儒教の要素が入った大乗仏教を信仰し、祖先祭祀を中心とした宗教的実践をおこなうベトナム人の村人の多くは、当時、彼らがクメール人の宗教と見做す上座仏教に対し距離を置いていた。しかしその後、調査村ではさまざまな変化が生じている。ベトナム人の主たる宗教的実践が祖先祭祀であることに変わりはないが、上座仏教寺院の儀礼に参加するベトナム人が徐々に増加し、上座仏教は彼らにとってより身近なものとなりつつある。本報告では、現在のベトナム人の「上座仏教との関わり方」を取り上げ、過去10年の変化の様相とその背景について考察したい。