2019年6月10日

6/29 発表要旨(3)

矢倉研二郎(阪南大学経済学部・教授)
「カンボジア稲作におけるコンバインの急速な普及-その要因と請負業者にとっての帰結」

YAGURA Kenjiro
"Rapid Diffusion of Combine Harvesters in Cambodian Rice Farming: Its Factors and Consequence to Harvesting Service Providers"

 近年,農村での人手不足や賃金上昇を背景に,カンボジアでは稲作の機械化が急速に 進行し,とくに請負業者によるコンバインを用いた収穫・脱穀の普及は目覚ましい.本研究は,タケオ州を事例に,コンバインという高額な農業機械への投資を可能とした要因,ならびにその急速な普及が請負業者の経営に及ぼした影響を探った.2018年2・3月にタケオ州で収穫請負業者(計30)を対象に実施した調査から得られたデータを分析した結果,①収穫請負業の非常に高い収益性,②地価上昇を背景とした金融機関からの長期・高額・低金利の融資による資金調達,③ベトナムでの中古品需要の存在が,請負業者のコンバイン購入を可能にしたことが明らかになった.他方で,こうして新規参入が促された結果,業者間の競争が激化し請負料金の低下が進行している.コンバイン購入の資本コストも控除すれば赤字となり,購入資金を借入に依存した請負業者の債務問題が今後続出することが懸念される.