2022年6月14日

7月17日 発表(4) 要旨

千田沙也加(SENDA Sayaka)京都大学東南アジア地域研究研究所 日本学術振興会特別研究員 

「カンボジアにおける凄惨な過去の継承に関する予備的考察―教師教育者の経験と語りから―」

“A Pilot Study of the Inherited Tragic Past in Cambodia: Analysis of Teacher Educators’ Experience and Narrative”

 本報告は、ポル・ポト政権期の凄惨な過去について、次世代の教育に携わる教育者が、どのようにその過去を受けとめ、いかに次世代へ伝えたいと考えているのか明かにすることを目的とする予備的考察である。調査は、1989年から2006年の間に初等及び中等教育を受けた経験があり、7年から16年間の教職経験のある4名の教員養成機関の教育者を対象とし、2022年2月にオンラインで聞き取りを実施した。聞き取り調査の結果、家庭や地域社会で、ポル・ポト政権期の過酷な出来事のみならず、平等で良かったという話など比較的良い出来事を聞いたこと、また1990年代前半までは、1980年代に作成された教科書が用いられ、あらゆる教科で知る機会があったことが語られた。そして、ポル・ポト政権期の過去の継承は、平和のために原因と影響を伝えたり、「民主主義とは何か」を考えたりする機会であることが望まれていた。すなわち、今回の調査対象の教育者たちにより、ポル・ポト政権期の過去を多様な状況として受け止めて、平和や民主主義と関連して継承しようとしていることが示唆された。