2022年6月14日

7月17日 発表(3) 要旨

下田麻里子(SHIMODA Mariko)早稲田大学文学研究科博士後期課程 日本学術振興会特別研究員

「アンコール期末期からポスト・アンコール期初頭のカンボジア初期上座部仏教寺院の形成過程とその歴史的背景に関する検討」

“A Study on the Formation Process of Cambodian Early Theravada Buddhist Temples and its Historical Background in the Late 13th - 16th Centuries”

 本発表は、アンコール期末期からポスト・アンコール期初頭の上座部仏教寺院を対象とした形態学的検討から、カンボジア初期上座部仏教寺院の形成過程を明らかにすることを目的とする。これにより、史料の欠落により歴史的空白期とされる当該時期におこった、中世カンボジア国家の変容について上座仏教という視点からの解明すること、および、今日のカンボジア特有の上座部仏教寺院の理解へとつなげていきたい。

 発表者は多様な遺構形態が集中するアンコール地域の13世紀末-16世紀の初期上座部仏教寺院を対象とした建築学的考古学的調査を実施、類型化を行い、礼拝建築(ストゥーパや祠堂)と"Kouen Preah Vihear"(仏教テラス)の関係性から6つのタイプに類型化した。さらに中世の碑文、年代記、先行研究、および現地調査により、形態やおよその年代観が判明しているカンボジアの他地域の同時代の寺院遺構と対応させることで、各類型のおおまかな変遷を把握した。これらをもとに、(1)礼拝建築と"Kouen Preah Vihear"の関係性の変化、(2)Kouen Preah Vihear(仏教テラス)のいくつかの特性、(3)礼拝建築の変化、そしてこれら変化がおこった歴史的背景について考察する。