2010年9月4日

9/11 第2回プノンペン部会、要旨2

石橋弘之(東京大学大学院 農学生命科学研究科 農学国際専攻)
「なぜ、住民はカルダモンを組合ではなく商人に売るのか?
―販売組合の運営と収穫解禁の慣習実践をめぐる社会関係からの検討」

カルダモン山脈の地名の由来でもあるショウガ科草本植物のカルダモンは、ポーサット州ヴィアル・ヴェーン郡OS区における現金収入源として利用されてきた森林産物である。
カンボジア内戦が終結した1990年代末まで戦時下にあったOS区において、終戦後に食糧難にあった住民は食糧購入用の現金収入源の一つとしてカルダモンを利用してきた。
食糧難の対応策の一つとして、OS区では経済的に貧しい住民が高額でカルダモンを販売できるよう、NGOの支援を通じて2007年に販売組合が設立された。地元の森林保護組合のもとで運営される販売組合は、設立当初は仲買人と競合しつつも、住民からカルダモンを買い取っていた。しかし、2009年以降、住民は外来の仲買人や、地元の商店にカルダモンを売る傾向にあり、組合は住民からカルダモンを買い取れていない事態も生じている。
一方でOS区では儀礼の開催をもってカルダモンの収穫を解禁する慣習のもと、従来は実が成熟する7月に解禁日が設定されてきた。しかし、2010年は実の成熟する時期に見解の相違が生じていた。組合運営者であり、かつ儀礼開催を担う住民は慣習に従い7月に収穫を解禁したが、その他の住民の中には実はすでに6月に成熟しているのだから解禁日を早めるべきだと主張する人もいたのである。
住民がカルダモンを組合ではなく商人に売ることと、収穫の解禁時期を早める声があることは、どのような相互関係にあるのだろうか?
上記をふまえ、本報告では 2009年から2010年にかけてOS区への断続的な訪問による現地調査結果を中心に、①食糧不足の対応策におけるカルダモンの位置づけ、②組合と仲買人への販売方法の相違、③慣習を維持する立場とその修正を求める立場の相違を検討する。これを通じて、組合運営と収穫解禁の慣習の実践における住民間の社会関係、および環境の変化や社会の変化に住民が慣習をどのように適応させようとしているのかを考察する。

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