2021年11月14日

11月28日 発表(2)要旨

 新谷春乃(SHINTANI Haruno)日本貿易振興機構アジア経済研究所

「1993年以後のカンボジアにおけるメディアの政治・社会的状況」

“Political and Social context of Media in Cambodia since 1993”

   本研究は、カンボジアが複数政党制・立憲君主制へ移行した1993年以降のカンボジアのメディアを取り巻く政治的・社会的状況の変遷を明らかにすることを目的としている。研究方法としては、主に日本国内やインターネット上で収集可能な資料(官報、現地紙、報告書等)を収集し、言論環境をめぐる法制度の変遷、マスメディア状況、取り締まり・攻撃事例の検討を通して、1993年から2020年にかけての言論環境の変遷を3つの時期区分に分けて概観する。第1期は黎明期にあたり、メディアを保護・規制する法制度が整備され、様々な政治的志向を持つメディアの活動が活発化した一方、ジャーナリストや新聞社に対する暴力的・法的攻撃が急増した。第2期は、引き続き様々な政治的志向を持つマスメディアの活動が活発に行われるなか、ジャーナリストに対する攻撃として暴力的なものが減少し、法的手段中心へと移行した。第3期は、インターネットの利用が拡大する中、自由な言論空間として注目されたソーシャルメディア等を規制する法制度や取り締まりが強化され、政府批判も厭わない新聞社やラジオ局が閉鎖に追い込まれ、一般人の言論活動も監視対象となった。