田畑幸嗣(TABATA Yukitsugu)早稲田大学
「扶南・真臘・アンコールをどのように捉えるか」
“Funan, Chenla, and Angkor: Reviewed from recent perspectives”
前アンコール時代、アンコール時代、 後アンコール時代という区分は、元々は美術史で様式を分類するための研究上の単なる工夫であったが、カンボジア史の区分として定着し、現在でも用いられている。前アンコール時代とは扶南・真臘という古代国家を指し、9世紀から15世紀が栄光のアンコール朝、その後の凋落と衰退の後アンコール時代から植民地時代へ至るのが、一般的なカンボジア史理解であろうし、そのことは博物館の展示方法などにもよく現れている。
近年は、凋落と衰退の後アンコールという時代理解に批判的な研究が主流となりつつあるが、扶南→真臘→アンコールという、フィノを経てセデスによってほぼ完成された古代カンボジの歴史観・国家観については、以前から見直しが迫られているにもかかわらず、他分野の研究者には十分注意を払われているとは言い難い。そこで今回は、扶南・真臘・アンコールとはどのような国家なのか、またそれらの連続性をどのようにして捉えるのかについて、これまでの様々な調査研究成果をもとに報告したい。