2021年11月14日

11月28日 発表(1)要旨

  中野惟文(NAKANO Korefumi)東北大学大学院文学研究科博士課程

「呪術実践を頼るということ―現代カンボジア社会における事例から」

“Relying on magic practices : The case in modern Cambodian society”

 本発表の目的は現代カンボジア社会における呪術実践に焦点を当てて、クライエントが呪術実践を選択して頼る要因を明らかにすることだ。現代カンボジア社会には呪術実践を行うクルー・クマエが数多くいる。彼らは骨接ぎ、マッサージ、薬草処方などそれぞれの分野に特化・専門化している。クルー・クマエの呪術実践は、クルー・クマエとクライエントだけでなく見物人もいる空間で行われていた。

 発表者は2018年から2020年1月まで断続的に行った現地調査で、クルー・クマエによる呪術実践の観察とクライエントへのインタビュー調査を行った。これらの調査結果からクライエントが呪術実践を頼る要因が次の2点であることを明らかにした。①怪我や病気を抱えるクライエントの多くは、病院・薬局などで治らなかった際の最後の選択肢として呪術実践を頼っていた。②それまでのクライエントの経験・知識に結びつくように呪術師と見物人の双方が呪術実践を解説して呪術にリアリティを与え、クライエントが呪術実践を「理解して」頼るようになった。本発表では呪術実践の具体的事例とその分析から①②について述べる。