2016年5月24日

6/12 Abstract(7)

発表要旨(7) 千田沙也加 Senda Sayaka

「ポル・ポト政権期後カンボジアにおける教育モデルの考察  ―新聞『カンプチア』の分析から―」
“Model for Education after the Pol Pot Regime in Cambodia: An Analysis of News Paper ‘Kampuchea’”

本発表の目的は、ポル・ポト政権期後であるカンプチア人民共和国期に政府によって刊行されていた新聞『カンプチア』の分析から、この時代の政府が教育には何が重要であるとし、国民に対していかなる教育のモデルを提示したのかを考察することにある。資料は、京都大学東南アジア研究所図書館に収められている新聞『カンプチア』のなかから、1979年から1984年までの5年分の教育に関係する記事を扱う。?
記事の内容としては、ポル・ポト政権期と、それ以前の植民地期から続いてきた教育を直接に批判する内容が含まれてはいるがそれほど多くなかった点、他の社会主義国の教育として、ベトナムが中心に取り上げられてはいたが、ポルトガルやハンガリー、モンゴル共和国といった複数の社会主義国が扱われていた点がまず指摘できる。加えて、少数民族を含む全ての民族の子どもに教育が必要とされ、全ての国民に識字が必要であるとされていた。また、子どもは国の未来のために大切であり、その子どもたち全員に教育が必要であるという記事、さらに女子教育に焦点が当てられている記事など、新しい教育の価値観の形成に努められていた。もう一点、現状の教育現場における課題や困難さはほとんど取り上げられることがなく、教育分野が極めて良好に拡充しているように示されているいくつかの記事からは、国の正常化、および発展の象徴として国民に提示されていたことも指摘できる。