発表要旨(2) 小坂井真季 Kozakai Maki
「人身取引の被害にあった青少年の自立に関する考察―バッタンバンの児童養護施設を例に―」
“The Road to Independence: A Case Analysis of Young Victims of Human Trafficking at an NGO in Battambang”
多くの未成年カンボジア人が隣国タイで出稼ぎを行っており、その中には正規の手続きを踏まず人身取引に該当するケースも多くみられる。様々な国際機関やNGOが本課題の解決に取り組んでいるが、学際的な研究にまで広がっていないのが現状である。
人身取引の被害にあった青少年たちは、タイから帰還後、児童養護施設の保護を受けるケースが多い。カンボジアには数百の児童養護施設があり、様々な事情を抱える数万人の子どもたちが生活していると言われている。発達上の重要な時期を家族やコミュニティと離れて施設で過ごすことによる様々な問題も指摘されているが、カンボジアでは児童養護施設が必要とされている社会的背景もあり、効果的なケアが施される必要がある。本研究では、多角的にカンボジアの人身取引背景の把握を行うと同時に、児童養護施設が青少年の自立にどのように関わることができるのかに関して考察を行う。
研究対象は、バッタンバン州にあるNGOが運営する児童養護施設で生活していた青少年366名(男性:232名、女性:134名)である。彼らの出生地、教育歴等の分析から、児童養護施設で生活する青少年の特徴を捉える。また人身取引被害者へのインタビューから、彼らの家庭環境、人身取引の被害に至った理由などを探る。更に、施設の卒業生に対するインタビューから、彼らの現在の経済状況、生活環境等を調査する。