2018年6月11日

7/1 発表要旨(5)

中野惟文(東北大学大学院)
Mr. Nakano Korefumi, Doctoral Students, Graduate School of Arts and Letters, Tohoku University

カンボジアの伝統医療師の治療 ―タケオ州の事例から―
Treatment of Traditional Healers in Cambodia: The Case of a Kru Khmer in Tak?o Province, Cambodia

 カンボジアにはクル・クマエと呼ばれる多くの伝統医療師が伝統医療サービスを提供している。彼らはアユルベーダ医学、土着のアニミズム、上座部仏教の教義とを融合させ、カンボジア特有の薬草などを用いて治療を行っている。クル・クマエは各村に大抵1人はおり、カンボジア保健省の予測では40~50%程度の国民が伝統医療を利用している。カンボジア政府はクル・クマエに対して短期トレーニングコースなどを提供して、伝統医療行為の実施や伝統医薬品の販売を実施するための認証の取得を促しているが、伝統医療の提供について法令上の規制はない。発表者は博士論文のフィールドワークの予備調査として、2017年6月から8月の2カ月間カンボジアに滞在した。その際、カンボジア南部タケオ州の一村落で一人のクル・クマエに出会い、彼の伝統医療の実践を観察した。彼はカンボジア政府の認証を受けていなかった。本発表ではこれまでのカンボジアにおける伝統医療の先行研究の論点を検討しつつ、発表者の観察したクル・クマエによる実践をカンボジア農村部の伝統医療の事例の1つとして取り上げる。