2018年6月11日

6/30 発表要旨(1)

小林知(京都大学)、Mr. Im Sokrithy(アプサラ機構)
Dr. Kobayashi Satoru, Kyoto University and Mr. Im Sokrithy, APSARA Authority, Cambodia

アンコール遺跡地域の景観変容に関する予備的研究 ―航空写真を使った国際化時代の資料共有化の試み―
Preliminary Survey of Landscape Transformation in Angkor region based on the William Hunts Collections

 本研究は、第二次世界大戦期に東南アジア大陸部で撮影された航空写真コレクションWilliam Hunts Collections(以下、WHC)を用いて、アンコール遺跡地域の景観変容を考察する国際的共同研究の予備的な報告である。航空写真は地域の歴史世界を知るための第一級の史資料であるが、撮影記録を欠く場合は、時空間情報のレファレンスが確定できず、使用に困難が伴う。ただしその場合でも、考古学的な遺跡など、目視で存在が判断できる対象を含むときは、当該地域の過去の状況を研究する素材として利用できる。本研究では、WHCのなかからアンコール遺跡地域を撮影した約80枚を抽出し、モザイク化し、1940年代のアンコール地域の景観の復元を試みた。そして、それを今日の景観情報と比較し、地域の人と自然の関わりの変化について予備的な分析を試みた。
 アプサラ機構を中心としたアンコール遺跡地域の保全においては、「過去の復元」が長らく議論されてきた。しかし、どの時代のいかなる「過去」を復元するのかという議論は、必ずしも十分に議論されてきていない。本研究の予備的な成果は、以上のようなアンコール遺跡地域の保全のあり方を見直す機会を提供する。本研究はまた、国際化時代の研究資源共有化という21世紀の研究者コミュニティが取り組むべき課題についても、一つのモデルを示す。