2018年6月11日

6/30 発表要旨(4)

友次晋介(広島大学)
LL.D. Tomotsugu Shinsuke, Hiroshima University

プレクトノットダム計画と日本主導の開発援助 ―カンボジアをめぐる冷戦・開発・メコン川流域諸国間関係―
Prek Thnot Dam Project and Japan-led International Development Aid: Cold War, Development, and International Relations in the Mekong Basin Concerning Cambodia

 カンボジアの首都プノンペンの郊外に、1万8千kWの水力発電所と灌漑用放水設備の建設を目指した未完のプレクトノットダム計画の遺構がある。同計画は1968年の協定発効から1970年にロンノル将軍による政変、これに続く内戦で頓挫するまでの間、日本がイニシアチブを取り、被援助国カンボジア含む12カ国が参加した開発援助だった。アメリカはベトナム戦争で消耗し、その隣国カンボジアとの関係とも悪化させ、インドシナ半島は不安定化していた。この中でアメリカはカンボジア援助については日本が主導することを期待するようになり、プレクトノット計画はその目玉となった。これを受け、日本は同計画を東南アジアへの援助外交の主要課題にあげるようになる。この計画が生まれ、日本がこれを推進するに至るまでの背景には、日米関係のみならず、冷戦期の東南アジア―アメリカの関係、メコン河流域の国際関係、中国の影響への日米両国の評価といった錯綜する要因があった。