2011年1月16日

2/27 第12回プノンペン勉強会

一昨年(2009年)秋から現地に留学している院生を中心に続けてきた勉強会を、来月久しぶりに開催します。どなたでもご参加いただけますので、参加希望の方は当日直接会場にお越しください。

<第12回プノンペン勉強会>
日時:2011年2月27日(日)午後2-5時

場所:Cafe Livingroom 2階小会議室(House#9, Street.306)

内容:
1. 卒業論文発表
報告者:新谷春乃(東京外国語大学外国語学部カンボジア語専攻)
論文タイトル:「民主カンプチア」時代を巡る歴史教育-国定歴史教科書の検討を通して-」

2. 第3回プノンペン部会に関しての相談事項など

3. その他

<発表要旨>
本報告では、これまで語られた様々な「民主カンプチア」に関する言説の中でも、歴史教育、特に歴史教科書に焦点を当て、国家による「民主カンプチア」言説が時期ごとにどのように展開されてきたのかを分析し、その歴史性を検証する。
1993年の総選挙の結果、一時的に2人首相制を導入するも、1979年の「民主カンプチア」崩壊以降、カンボジアでは一貫して、人民革命党/人民党による支配が継続されている。その継続された支配の中で、対クメール・ルージュ政策は、クメール・ルージュの動向だけでなく、国際社会との関わりに敏感に反応しつつ、展開されてきた。
歴史教育を規定する学習指導要領では、1980年代はカンプチア人民共和国成立の正統性を導きだす形で、近現代史を重視するという位置付けを歴史教育に与えた。1990年代以降、愛国心を育み、過去から学ぶという視点を導入し、古代史・アンコール史重視の歴史教育が行われるようになった。「民主カンプチア」時代を巡る歴史教育の規定は、国家による対クメール・ルージュ政策とほぼ同調するものの、パリ和平以降、正式にクメール・ルージュ裁判特別法廷が開廷されるまで、その扱いに慎重な傾向が見られた。
以上の様な背景から、1979年以降発行された国定歴史教科書による「民主カンプチア」時代の記述を分析した。
クメール・ルージュとの内戦下で国内政治が不安定であった時期、国連での議席を「継続」しているクメール・ルージュ勢力を否定するため、記述では「ポル・ポト―イエン・サリ一味による民族虐殺政権」というように、「国家」ではない「政権」であるという認識を強調した。1980年代、カンプチア人民共和国の正統性を示すことが国是であり、歴史教育は国家成立の正統性を提示する絶好の空間となった。
パリ和平後、依然として国際社会の中で正統性を持つ「民主カンプチア」を国家として認めたが、それは、カンプチア人民共和国の正統性である「ポル・ポト―イエン・サリ一味による民族虐殺政権」の否定と矛盾した。この矛盾を解決するため、歴史教科書は記述の中で様々な工夫を用い、記述に国家の反「民主カンプチア」意識を盛り込んだ。
なお、本報告は、平成22年度に東京外国語大学に提出した卒業論文を元としている。