2012年6月4日

7/8 第6回日本カンボジア研究会、発表要旨(6)

カンボジアの小中学校教科書における食の記述――1990年代と近年との比較

高橋美和(愛国学園大学)

1990年代後半にカンボジアで使用されていた国語教科書『クメール語』には、 食に関する記述が非常に多いが、それはなぜか。食の記述がある「クメール語」、 「理科」、「社会科」の3教科の教科書を資料とし、(1)クメール語教科書における食の記述と、理科、社会科分野における食の記述とどのような相違があるか、(2)1990年代後半と近年(2008~2011年)の教科書を比較してどのような変化が見出せるか、について検討した。
食の記述の分析にあたって、言及される文脈から、[食物]、[食事]、[健康]、[農漁]、[文化]の5つの領域に分類し、該当単元数(課の数)を数えた。1990年代の教科書では低学年向けの3教科全てに食の記述があり、中でも「クメール語」教科書における記述が多い。近年の教科書では、食の記述は「理科」・「社会科」が担当し、「クメール語」教科書にはほとんどない。また、宗教、年中行事、民族的習慣といった[文化]領域における食の記述は、1990年代後半の、特に「クメール語」教科書には豊富であったが、現在の教科書ではほぼ消滅していることがわかった。
ここ10年余りの期間に起きた大きな変化の背景要因としては、1990年代におけるカンボジアの教育事情や、近年の就業人口構成の変化などが考えられる。