2018年6月11日

6/30 発表要旨(2)

東佳史(立命館大学)
Dr. Yoshifumi Azuma, Ritusmeikan University

「カンボジアの春」あるいは「フェイク・デモクラシー」 ―2018年カンボジア総選挙に向けた報告―
Cambodia’s Spring or Fake Democracy, towards the 2018 general election

 2018年7月29日に予定されている総選挙の有権者登録は5月25日に締め切られる。2014年総選挙と2017年クム・ソンカット選挙でのCNRP躍進を受けて党首の逮捕とCNRPの解党が与党によって強行された。その多くはフンセン首相の強硬な対応を見誤り、妥協よりも対決を選んだ救国党のオウンゴールとも言えるが、ここまでの強硬策を許している国際社会の構造的変化も需要である。中国はすでに最大援助・投資国でありもはやフンセン首相は上から目線で民主主義や自由で公正な選挙を説教するEU・米国などの古臭い支援国(日本も含めた)を以前ほど重要視していない。
 このような構造的な変化の中で現在、政党登録と有権者登録が行われているが、前々回総選挙あたりから問題となっている、17歳以上人口と有権者登録者数との乖離、つまり幽霊投票者と野党支持者登録妨害の増加である。4月末現在では有権者登録では目立った報告はない。それは監視するNGOsへの有形無形の脅迫によるとも言える。本報告では統計局から得た人口統計の詳細とNEC(国家選挙管理局)の有権者登録数の比較を通して2018年総選挙の前哨戦を検証する。