2017年6月22日

6/24 Abstract (Roundtable Discussion 2)

東佳史
「Hybrid Democracyの周縁で」

本報告では発表者の2000年代初めからの調査地であるバッタンボン州、サムロット郡でのクム長選挙の素描を行う事を目的とする。1990年代後半にサムロットを支配するクメール・ルージュがCPPに投降してから現地では急激な森林伐採とインフラ整備を伴ったELCによる農園開発が進んでいる。 当然、クム長も皆元KR投降兵士で、初期定住民の多くはKR除隊兵士である。 その後、同地区での平和の定着と他州での人口増・農地所有の偏在化を受けて多くの開拓民が流入し、両住民ともに和平後の地雷原を開墾した土地・荒憮地等を必要とした。その開墾後の農地分配権を握るクム長は絶大な権力があった。両住民共にクム長にはしがらみと恩があり、クム長選ではCPPが圧勝していた地区である。しかし、2017年は、かなりの数のクム長が入れ替わる。各コミューン内訳は、正確には26日のNECからの最終発表を待たねばならないがバッタンボン州全体でも2012年選挙でのCPP102から2017年ではCPP54、CNRP48とすでに大幅に影響力を低下させている。それが平和の定着後に出生した「戦後派」有権者の増加という人口学的要因によるものか、「インフラ開発」による利益誘導という「開発独裁」体制が取るHybrid Democracyの政治経済的限界が露呈したものかは今後の調査を待たねばならない。