2013年3月29日

4/27 東南アジア学会、関東例会

本年度最初の関東例会(4月27日開催)のご案内をお送り致します。

今回は、藤倉哲郎会員による「ベトナム・カントー市ハウザン河氾濫原の一農村における雇用機会と農村世帯の就業・家計構造との関係」及び、新谷春乃会員による「カンボジア現代史認識の変容―カンプチア人民共和国成立以後の国定教科書の分析を通して―」の2報告です。

 詳細は下記をご覧下さい。

<2013年度4月例会>
日時: 2013年4月27日(土)13:30~17:45
会場: 東京外国語大学・本郷サテライト5階セミナースペース
http://www.tufs.ac.jp/access/hongou.html

☆第一報告(13時30分~15時30分)
報告者:藤倉哲郎氏(東京大学大学院総合文化研究科学術研究員)
コメンテーター:岩井美佐紀氏(神田外語大学国際言語文化学科准教授)
報告題目:「ベトナム・カントー市ハウザン河氾濫原の一農村における雇用機会と農村世帯の就業・家計構造との関係」

<報告要旨>
本報告は、ベトナムの地方における近年の雇用機会の拡大が、農村世帯の就業構造・家計構造に対して、どのような影響を与えているのかを、メコンデルタの中心都市カントー市の中にあって、ハウザン河の氾濫原に位置する一農村を取り上げ考察する。調査村の世帯には、稲作の小零細経営を維持しながら、世帯内若年労働力を賃金労働に配分するという、労働力配分戦略がみられる。おもに村内若年層が就いている賃金労働の就労条件は、学歴と職種を通じて、土地所有規模に基づく既存の村内階層間格差を再生産している面もあるが、全体として階層間の所得格差を縮めている。こうした新たな雇用機会の出現は、土地条件に制約があり、土地の分割相続が限界点に達している調査村において、世帯の世代的再生産サイクルに、新たな契機を与えている。

☆第二報告(15時45分~17時45分)
報告者:新谷春乃氏(東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程、日本学術振興会特別研究員DC)
コメンテーター:北川香子氏(東京大学大学院人文社会系研究科助教授)
報告題目:「カンボジア現代史認識の変容―カンプチア人民共和国成立以後の国定教科書の分析を通して―」

<報告要旨>
本報告では、人民党政権下(1979年―2012年)に刊行された国定教科書の分析を通してカンボジア現代史がいかに叙述され、変容してきたかを論じる。人民党は、独立以降から繰り返された政権交代の流れを打ち切り、現在に至るまで政権を担っている。この間、共産主義志向の放棄、党史の書き替え等、党の性格を変えてきた。他方、現代史叙述の中で評価されるシハヌークやポル・ポトら、1979年以前の体制指導者は、人民党政権下で台頭するも、1990年代末を境に衰退していく。近年では、カンボジア特別法廷の審議が進む中、現代史を巡る語りは国際社会から注目を受けるようになる。このような状況を踏まえ、国定教科書の現代史叙述は度々書き替えられてきた。これらの書き替えは、カンボジア/クメールといった「カンボジア史を語る枠組み」を変更しながら、共産主義とシハヌークへの評価を鍵としている。その評価は、近年人民党史に沿った評価からの乖離傾向が見られる。本報告では、これら一連の変容を1987年、2001年、2011年に発行された教科書の分析を通して論じる。

終了後、報告会場内にて簡単な懇親会を用意しております。奮ってご参加ください。