小林知 (KOBAYASHI Satoru) 京都大学
「カンボジアにおける農村食の将来は?:淡水魚の発酵食品プラホックを中心に考える」
“What is the Future of Rural Food/Cuisine in Cambodia: With the Special Focus on the Fermented Fish Paste Called “Prahok””
(発表要旨)
You are what you ate. という英語の格言にあるように、どのような食品・食材を、どのように調理し、どのように食べるのかという問題は、人間にとって普遍的な課題である。それは、健康の維持という生理学的な側面だけでなく、幸福感を生みだしたり、文化伝統のアイデンティティの支えになったりする複合的な意義をもつ。本発表では、2000年代以降に生活と生業の近代化とグローバル化が著しいカンボジアにおいて、特に淡水魚の発酵食品プラホックの農村地域における生産状況の過去と現在を取り上げて検討し、人びとの食の将来像を考えたい。プラホックは、日本の味噌・醤油に匹敵するカンボジアの主要な伝統調味料であり、かつては各家庭で手作りされていた。しかし最近は農村部であっても、自らの手でそれを作る世帯が減っている。主食ではなく、副食あるいは調味料としてカンボジアの人びとの食を支えた食品の位置づけが、その農村社会と住民生活の変化の何を照らしているのかという関心は、日本を含めた人間社会の近代化・グローバル化の考察と深く関わる。ちなみに、本発表は、公表済みの以下のエッセイの内容を拡大したものである。
小林知.2022.「生業と『農村食』 発展途上国における生業と食の変化」『世界の発酵食をフィールドワークする』横山智編. 農文協. 98-104頁.