傘谷祐之(KASAYA Yushi) 名古屋大学
「カンボジア王国憲法30年のあゆみ:「複数政党制の自由民主主義体制」の変容」
“Thirty Years of the Constitution of the Kingdom of Cambodia: The Metamorphosis of "the principles of liberal multi-party democracy”
カンボジア王国の現行憲法(1993年憲法)は、来年2023年で公布・施行から30周年を迎える。短命に終わることが多かったこれまでのカンボジアの諸憲法の中では、最も長い期間にわたって効力を有した憲法である。しかし、1993年憲法の基本原則の一つである「複数政党制の自由民主主義体制」は、2017年の最大野党の解党と、2018年の上下院選挙での与党による議席の独占を経て、ここ数年で急速に形骸化しつつあり、現地英字紙では「民主主義は死んだ」との評価もなされている。1993年憲法は、2021年までに9回の改正・1回の条項追加を経てきた。この報告では、この計10回の憲法の変更を振り返り、「複数政党制の自由民主主義体制」が変容しつつあることを指摘する。
なお、この報告は、2021年12月に公刊した拙稿「カンボジア王国」鮎京・四本・浅野編『新版 アジア憲法集』(明石書店、2021年)161-206頁、に基づく。