2020年11月4日

発表(3)要旨

 岩元真明(IWAMOTO Masaaki)九州大学芸術工学研究院・助教

「近代建築家ヴァン・モリヴァンの内戦前後の活動について」 

"Activities of Modern Architect Vann Molyvann before and after the Cambodian Civil War"

フランスから独立を果たした1953年から内戦が勃発する1970年までの17年間、カンボジアはノロドム・シハヌークのリーダーシップの下で未曾有の近代化を体験した。この間に展開された近代建築運動は「新クメール建築」と呼ばれ、国家建設と近代建築が結びついた好例として、東南アジアにおいて独特の建築運動が形成された希有な事例として、国際的に再評価の機運が高まっている。このような中で、ノロドム・シハヌークに重用され、数々の国家的プロジェクトを牽引したヴァン・モリヴァンの活動を把握することは建築史的にきわめて重要である。本発表では、拙・博士論文「カンボジアの建築家ヴァン・モリヴァン(1926-2017)に関する建築史的研究:国家揺籃期における建築家の課題」(2020)に基づき、ヴァン・モリヴァンがいかにしてクメール人初の公認建築家となったか、いかにして数々の国家的プロジェクトを遂行したか、亡命期にはいかなる活動を行っていたか、建築史の立場から概観する。また、「オリンピック・スタジアム」と渾名されるナショナル・スポーツ・コンプレックス(1964)を例として、ヴァン・モリヴァンの建築作品の特徴について考察する。