2020年11月4日

発表(1)要旨

 吉田尚史(YOSHIDA Naofumi) 立正大学社会福祉学部・特任教授

「精神疾患概念の医療人類学的研究―カンボジアにおける精神医療の変遷をめぐって」

"A Medical Anthropological Study of Mental Illness Concepts: Psychiatric Care Transition in Cambodia"

本発表は、精神疾患概念についての医療人類学的な研究であり、フィールドワーク、すなわち参与観察(病院)、インタビュー(患者・僧侶)、資料収集(公文書館・保健省・専門医論文など)に基づく。遠い過去(フランス植民地時代)、近い過去(ポル・ポト時代)、現在まで(和平協定以降)の3期に分けてカンボジアにおける精神医療の変遷をめぐる。そこから得た結果を通じて明らかにすべき三つの問いに答える。一つ目は、カンボジア人にとって精神疾患概念とは何かである。移民・難民として移住した国「外」のカンボジア人らも対象として検討する。二つ目は、どのようなリアリティでもって精神疾患が世界に存在しているのかという問いである。三つ目は、多文化間の精神保健分野での実践に関わり、精神疾患概念の研究がどのように役立つかという点である。なお本論は博士学位請求論文(2019年度、早稲田大学)による。