2015年5月21日

6/20 第9回日本カンボジア研究会、発表要旨4

小林 知(京都大学東南アジア研究所)
「カンボジア農村における宗教的リーダーシップの変容-
アチャー・ヴォアットの経歴分析を中心に」

本発表は、発表者が1990年代末から調査を続けるコンポントム州の農村地域で得た、ヴォアットと呼ばれる仏教施設で儀礼活動を差配する俗人指導者(“アチャー・ヴォアット”)の経歴に関する資料の分析を行い、ヴォアットを中心とした宗教的なリーダーシップをめぐる変化を考える。これは、農村を中心としたカンボジア社会の変化を、リーダーシップの担い手に着目して検討する試みの一部である。カンボジア農村におけるリーダーシップの担い手は誰か。これは、研究者だけでなく、各種の援助活動をカンボジアで実践する者にとっても興味深い問題である。カンボジアでは、伝統的に、フォーマルなリーダーシップの弱さ/不透明さが指摘されてきた。一方で、ヴォアットを中心とした宗教的な紐帯が、特にインフォーマルな領域で農村コミュニティの基盤をつくっているという意見が提出されてきた。しかし、その状況に関する分析は深められていない。本発表は、2000年代に制度化された行政区評議会などの近年のフォーマルなリーダーを含めて、カンボジア農村におけるリーダーシップのあり方をめぐる総合的分析を進める出発点として、宗教的なリーダーシップをめぐる過去と現在の変化を考察する。

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