2025年6月9日

第19回 日本カンボジア研究会 プログラム

 第19回日本カンボジア研究会プログラムをお知らせいたします。

今年度は対面をメインとするハイブリッド形式で実施いたします。

カンボジアに関わる話題を広く取り上げて議論する機会として,皆さまのご参加をお待ちしております。


参加登録方法

(1) 対面参加 事前登録の必要はございません。

(2)オンライン参加 下記のGoogleフォームより事前登録をしてください。

事前参加登録フォーム: https://forms.gle/JdL12osbvtcdSRiF7

事前登録いただいた方には、前日までに当日のZoomURLをお送りいたします。

事前登録締切: 2025年7月19日(土)

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開催期日:2025年7月26日(土)・27日(日)

開催形態:対面をメインとするハイブリッド(発表は原則対面のみ)

開催場所:京都大学東南アジア地域研究研究所 稲盛財団記念会館3F中会議室(https://kyoto.cseas.kyoto-u.ac.jp/access/)


7月26日(土)

12:00開場

12:30~12:40 趣旨説明


12:40~13:30 発表①【オンライン】

ター・スレイヌット(THA Sreynuth)在カンボジア日本国大使館

「現在のパイリンのタン・ユー日傘とチェンマイのボー・サーン日傘(2022年8月~9月)」

“Presently of Tang Yu Umbrella in Pailin and Bo Sang Umbrella in Chiang Mai (August-September 2022)”

発表要旨は、こちら


13:40~14:30 発表②

國分元太(KOKUBU Genta)東京理科大学

「仏領期カンボジアにおける鉄筋コンクリート造屋根付き市場の研究:S.I.D.E.C.社による構法の標準化と熱帯環境への適応」

“Covered Market in Colonial Cambodia: Standardization and Climatic Adaptation of Reinforced Concrete by S.I.D.E.C.”

発表要旨は、こちら


14:40~15:30 発表③

岡田知子(OKADA Tomoko)東京大外国語大学

「1980年代社会主義政権下のカンボジアにおける地下写本小説」

“Unofficial Entertainment Fiction After Pol Pot Regime in Cambodia”

発表要旨は、こちら


15:40~16:30 発表④

下條尚志(SHIMOJO Hisashi)神戸大学

「水上集落の形成と日常政治:トンレサップ湖南部の湖畔から考えるカンボジア・ベトナムの間隙」

“The Creation and Everyday Politics of Floating Settlements on Water: The Elusive Space between the Cambodian and Vietnamese States Seen from the Southern Tonle Sap Lakeshore”

発表要旨は、こちら


16:40~17:30発表⑤

<高校生による発表>尾上大和(ONOE Yamato)宮城県仙台二華高等学校

「カンボジアにおけるマイクロファイナンス活用の現状と課題」

“Current Status and Challenges of Microfinance Utilization in Cambodia”

発表要旨は、こちら


17:40~18:10発表⑥

<高校生によるグループ発表>細野景叶・近藤修真(HOSONO Keito, KONDOU Syuma)成城高等学校

「スロラウチュルム村における地雷撤去による土地再生」

“Land Reclamation Through Demining in the Village of Slorau Troum”

発表要旨は、こちら


●懇親会(希望者のみ)


7月27日(日)

9:30 開場


10:00~10:50 発表⑦

下田麻里子(SHIMODA Mariko)早稲田大学

「前近代カンボジア上座部仏教寺院におけるシーマー石の変遷とその歴史的背景:考古学的視点からのアプローチ」

“The Evolution of Sīmā Stones in Pre-Modern Cambodian Theravāda Buddhist Temples: An Archaeological Perspective on Historical Context”

発表要旨は、こちら


11:00~11:50 発表⑧

千葉徹大(CHIBA Tetta)東京大学大学院

「カンボジアの医療史と社会制度分析」

“The History of Medicine and Analysis of Social Systems in Cambodia”

発表要旨は、こちら


11:50~13:00 昼休憩


13:00~13:50 発表⑨

古川はるな(FURUKAWA Haruna)常葉大学

「カンボジアにおける音楽教育の実践と展望-プノンペンと地方での取り組みから」

“Practice and Perspectives of Music Education in Cambodia: From Initiatives in Phnom Penh and Rural Areas”

発表要旨は、こちら


14:00~17:00 パネル「カンボジアにおける少数民族研究の現在」

“Multi-ethnic Cambodia: Alternative Perspectives on Its Society”

要旨は、こちら


14:00~14:05 趣旨説明

松井生子(MATSUI Naruko) 日本女子大学

 

14:05~14:25 発表 (1)

松井生子(MATSUI Naruko) 日本女子大学

「カンボジアの少数民族研究:歴史的視点と現在の動向」

“Research on Ethnic Minorities in Cambodia: Past Insights and Present Trends”


14:25~14:45 発表 (2) 【オンライン】

山﨑寿美子(YAMAZAKI Sumiko) 愛国学園大学

「カンボジア北東部のラオ人の民族関係と社会変容」

“Ethnic Relations and Social Change among the Lao People in Northeastern Cambodia”


14:45~15:05 発表 (3)

石橋弘之(ISHIBASHI Hiroyuki) 室蘭工業大学

「カンボジア西部に暮らすモン・クメール系ペアル語派の人々とクメール社会との接点」

“Mon-Khmer Pearic Group and Their Contact with Khmer Society in Western Cambodia”

 

15:05~15:15 休憩 


15:15~15:30 発表 (4) 

吉本康子(YOSHIMOTO Yasuko) 立命館大学

「カンボジアの「チャム」と言語使用の実態:プノンペン周辺における短期調査を通して」

“The Current Language Use of Cham in Cambodia, Based on Short-term Research around Phnom Penh”


15:30~15:50 発表 (5)

遠藤正之(ENDO Masayuki) 立教大学

「カンボジアにおけるマレー系住民」

“The Malay Population in Cambodia”


15:50~16:10 発表 (6)

神田真紀子(KANDA Makiko) 東京外国語大学

「ベトナム語出版物からみた植民地期カンボジアの移住者の諸相」

“Various Aspects of Migrants in Colonial Cambodia through Analysis of Vietnamese Publications”


16:20~17:00 質疑応答


発表要旨(1)

 ター・スレイヌット(THA Sreynuth)在カンボジア日本国大使館【オンライン】

「現在のパイリンのタン・ユー日傘とチェンマイのボー・サーン日傘(2022年8月~9月)」

“Presently of Tang Yu Umbrella in Pailin and Bo Sang Umbrella in Chiang Mai (August-September 2022)”

(発表要旨)

クメールの古い歌、伝統舞踊、文学小説などにタン・ユー日傘とコーラ人がカンボジアに現れたことを示しています。 東南アジア本土では、多くの文化、習慣、伝統が非常に似ています。 タン・ユー日傘に関しては、タイでもボー・サン日傘と似ている傘は、チェンマイでは非常に有名で、海外でも有名であり、チェンマイのシンボルともなっています。チェンマイのボー・サン日傘とパイリン州のタン・ユー日傘の違い、及びその歴史についての研究の目的です。まとめは、パイリンでは現在、タン・ユー日傘は作られておらず、タン・ユー日傘を使用するコーラ人も見つけいません。パイリン州の伝統舞踊のみタン・ユー日傘が使用されています。 チェンマイのボーサン日傘は社会が発展したとはいえ、日差しや雨を防ぐために日常生活でその傘を使用することは少なくなったが、ボーサン日傘は今でも日常生活の中で他の方向で活躍して、輸出向けの工業生産も行われています。


発表要旨(2)

 國分元太(KOKUBU Genta)東京理科大学

「仏領期カンボジアにおける鉄筋コンクリート造屋根付き市場の研究:S.I.D.E.C.社による構法の標準化と熱帯環境への適応」

“Covered Market in Colonial Cambodia: Standardization and Climatic Adaptation of Reinforced Concrete by S.I.D.E.C.”

(発表要旨)

本発表では、1920~30年代の仏領期カンボジアにおいて建設された鉄筋コンクリート造の屋根付き市場に焦点を当て、フランス系建設会社S.I.D.E.C.(Société Indochinoise d'Études et de Constructions)による構法的特徴とその背景を明らかにする。プノンペン、バッタンバン、カンポット、コンポンチャムなど主要都市に展開された市場建築では、標準化されたプレキャスト・コンクリート部材を用いた建設の合理化と、熱帯気候への適応が図られていた。現地調査およびアーカイブ資料に基づき、それらの構法はカンボジア単独の事例にとどまらず、ベトナムにおける同社の市場プロジェクトとも連続した試みであったことを示す。本研究はカンボジアの近代建築史、特に植民地期の建築史を、企業史、鉄筋コンクリート技術史の観点から捉えなおす視座を示すものである。


発表要旨(3)

 岡田知子(OKADA Tomoko)東京外国語大学

「1980年代社会主義政権下のカンボジアにおける地下写本小説」

“Unofficial Entertainment Fiction After Pol Pot Regime in Cambodia”

(発表要旨)

1975年から1979年のポル・ポト政権下では、中国の文化大革命に倣った極端な共産主義が推進され、知識人や書物は害悪をもたらすものとして排除された。同政権崩壊後はソ連・ベトナム支援型社会主義政権が1990年初頭まで続いた。厳しい言論統制の下、文学作品は社会主義リアリズムの手法で書かれ国営印刷所で出版された。この時期に市井の人びとの文化的構築物である読書行為がどのように始まり、発展していったかを文学社会学的な視点を踏まえて考察する。研究対象として1980年代に流通していた地下写本小説を蒐集、内容を精査し、また当時の関係者へのインタビューをもとに文学活動を明らかにするのが目的である。今回は2024年8月に行ったプノンペンでの調査で得た結果の内容(収集できた写本小説原本の提示、また、写本小説の作家、写本をした人、読者へのインタビューなど)について紹介する。

発表要旨(4)

 下條尚志(SHIMOJO Hisashi)神戸大学

「水上集落の形成と日常政治:トンレサップ湖南部の湖畔から考えるカンボジア・ベトナムの間隙」

“The Creation and Everyday Politics of Floating Settlements on Water: The Elusive Space between the Cambodian and Vietnamese States Seen from the Southern Tonle Sap Lakeshore”

(発表要旨)

発表者はメコンデルタ多民族混淆社会で調査を行ってきたが、それと連続性のある社会として2023年以来トンレサップ湖南部の水上集落に着目し始めた。当初はベトナムと関連の深い住民を主な対象に集落の理解を試みたが、水上民への調査を行うなかでその前提を再考する必要性を理解した。理由は①現/元水上民はベトナム系住民に限られないこと、②水上民は元々の住民に加えポル・ポト政権崩壊後の1979年以降にカンボジア、ベトナム各地から移住した者がいること、③水上生活をやめ陸地で暮らし始めた住民にはクメールやチャムが比較的多く見られることが挙げられる。

近年カンボジアでは、漁区システム廃止や漁獲量増加に伴う環境変化と、国家による陸地への定住化政策により水上民は生活の変化を迫られている。他方で、1979年以降のベトナムからの移住者の多くは無国籍状態であり、しばしば「ベトナム人」と括られ、強制排除の対象にはなるが、定住化政策の埒外に置かれている。本発表では、水上集落の形成過程とそこでの日常生活のなかで見える政治を検討する。


発表要旨(5)

 <高校生による発表>
尾上大和(ONOE Yamato)宮城県仙台二華高等学校
「カンボジアにおけるマイクロファイナンス活用の現状と課題」
“Current Status and Challenges of Microfinance Utilization in Cambodia”

(発表要旨)
本研究ではカンボジア農村社会におけるマイクロファイナンス利用の現状と課題を調査した。シェムリアップ州アンコールクラウ村、プラサート・チャッ村、トンレサップ湖北部の水上集落、合わせて49軒にインタビュー調査を行ったところ約70%の家庭がマイクロファイナンスを利用していた。また、マイクロファイナンス利用の理由を質問したと結果、利用した家庭のうち約85%がマイクロファイナンス本来の目的である、貧困脱出のための事業開始資金への融資以外の目的で利用しており、またマイクロファイナンス側も経営方針を貧困削減から営利追及に変更しており、カンボジア農村社会においてはマイクロファイナンス本来の役割が失われている、という課題があることがわかった。また、マイクロファイナンスを利用した家庭の約半数は世界銀行が定める「極度に貧しい状態」で生活しており、返済能力がない家庭もマイクロファイナンスを利用している、という課題も存在する。

発表要旨(6)

 <高校生によるグループ発表>

細野景叶・近藤修真(HOSONO Keito, KONDOU Syuma)成城高等学校

「スロラウチュルム村における地雷撤去による土地再生」

“Land Reclamation Through Demining in the Village of Slorau Troum”

(発表要旨)

現在カンボジアは内戦時からの復興に力を入れている。その中で、米の生産量を比較すると 18 年で約 2.8 倍に増加している。また、一人当たりの耕地面積も 1.5 倍ほどに増えている。それは 2000 年代以降の諸外国からの援助によってインフラが急速に整備されているからである。一方で、ポル・ポト政権崩壊後の内戦時に埋められた 400~600 万もの地雷は撤去がすすんでいるものの現在でもまだ存在している。このことにより、有効活用できない土地が存在しているのである。そこで私たちは土地を有効活用するために地雷撤去による土地所有と稲作を中心とする農業生産性及び住民の生活の変化について明らかにする必要があったため、私たちは日本地雷処理を支援する会(Japan Mine Action Service:JMAS)の支援を受けたバンテアイメンチェイ州スロラウチュルム村で農業を営む農家に対して月収や耕地面積、学歴、JMAS の支援の効果などの聞き取り調査を行った。その結果、JMAS の支援による収入の増加や農業や生活向上へのさらなる投資が期待できる。一方で、学歴と月収に相関がなく、耕地面積と月収にも相関がないことから、農家たちが言う月収には確実性がない可能性も否定できない。それは、数字の計算などの十分な教育の不足の影響もあるため、子供のみならず、大人への基礎的な教育の充実が必要である。