パネル「カンボジアにおける少数民族研究の現在」
“Multi-ethnic Cambodia: Alternative Perspectives on Its Society”
“Multi-ethnic Cambodia: Alternative Perspectives on Its Society”
(要旨)
カンボジアでは1990年代まで少数民族に関する研究が少なかったが、2000年代から現地の史料や長期フィールドワークに基づく研究が増加し、現在、研究に一定の蓄積が見られるようになっている。だが、少数民族の人々の実際の暮らしやクメール人との関係などはまだ多くの人に知られていないのが実情ではないだろうか。本パネルはカンボジアの少数民族等に関わってきた研究者が登壇し、それらの人々の歴史や現在の状況を示すと同時に、カンボジア社会を見る際のオルタナティブな視点を提示することをめざしている。
パネルの構成は、まず松井報告がカンボジアの少数民族研究の動向、過去の政策の推移と各民族への影響について包括的に論じ、その後に民族的背景を持つ人々についての個別の報告に移る。北東部のラオ人に関する山﨑報告は、彼らの語りや地名の特徴等からクメール人との交流を含めた同地域の民族的な特色を概観すると共に、今日の生活世界の変化を考察する。続く石橋報告はカルダモン山脈のペアル語派の人々の視点から、彼らとクメール人の接点および関係について考える。吉本報告はカンボジアに居住するチャム人の言語状況やエスニシティ、ベトナムのチャム人の事例との異同について取り上げ、遠藤報告はチャム人を含むカンボジアへのマレー系住民の移住の歴史について考察する。最後の神田報告は植民地期に発行されたベトナム語出版物を中心に、ベトナム人移民1世を主とする当事者の視点から彼らの生活と問題意識を明らかにする。