2025年6月9日

第19回 日本カンボジア研究会 プログラム

 第19回日本カンボジア研究会プログラムをお知らせいたします。

今年度は対面をメインとするハイブリッド形式で実施いたします。

カンボジアに関わる話題を広く取り上げて議論する機会として,皆さまのご参加をお待ちしております。


参加登録方法

(1) 対面参加 事前登録の必要はございません。

(2)オンライン参加 下記のGoogleフォームより事前登録をしてください。

事前参加登録フォーム: https://forms.gle/JdL12osbvtcdSRiF7

事前登録いただいた方には、前日までに当日のZoomURLをお送りいたします。

事前登録締切: 2025年7月19日(土)

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開催期日:2025年7月26日(土)・27日(日)

開催形態:対面をメインとするハイブリッド(発表は原則対面のみ)

開催場所:京都大学東南アジア地域研究研究所 稲盛財団記念会館3F中会議室(https://kyoto.cseas.kyoto-u.ac.jp/access/)


7月26日(土)

12:00開場

12:30~12:40 趣旨説明


12:40~13:30 発表①【オンライン】

ター・スレイヌット(THA Sreynuth)在カンボジア日本国大使館

「現在のパイリンのタン・ユー日傘とチェンマイのボー・サーン日傘(2022年8月~9月)」

“Presently of Tang Yu Umbrella in Pailin and Bo Sang Umbrella in Chiang Mai (August-September 2022)”

発表要旨は、こちら


13:40~14:30 発表②

國分元太(KOKUBU Genta)東京理科大学

「仏領期カンボジアにおける鉄筋コンクリート造屋根付き市場の研究:S.I.D.E.C.社による構法の標準化と熱帯環境への適応」

“Covered Market in Colonial Cambodia: Standardization and Climatic Adaptation of Reinforced Concrete by S.I.D.E.C.”

発表要旨は、こちら


14:40~15:30 発表③

岡田知子(OKADA Tomoko)東京大外国語大学

「1980年代社会主義政権下のカンボジアにおける地下写本小説」

“Unofficial Entertainment Fiction After Pol Pot Regime in Cambodia”

発表要旨は、こちら


15:40~16:30 発表④

下條尚志(SHIMOJO Hisashi)神戸大学

「水上集落の形成と日常政治:トンレサップ湖南部の湖畔から考えるカンボジア・ベトナムの間隙」

“The Creation and Everyday Politics of Floating Settlements on Water: The Elusive Space between the Cambodian and Vietnamese States Seen from the Southern Tonle Sap Lakeshore”

発表要旨は、こちら


16:40~17:30発表⑤

<高校生による発表>尾上大和(ONOE Yamato)宮城県仙台二華高等学校

「カンボジアにおけるマイクロファイナンス活用の現状と課題」

“Current Status and Challenges of Microfinance Utilization in Cambodia”

発表要旨は、こちら


17:40~18:10発表⑥

<高校生によるグループ発表>細野景叶・近藤修真(HOSONO Keito, KONDOU Syuma)成城高等学校

「スロラウチュルム村における地雷撤去による土地再生」

“Land Reclamation Through Demining in the Village of Slorau Troum”

発表要旨は、こちら


●懇親会(希望者のみ)


7月27日(日)

9:30 開場


10:00~10:50 発表⑦

下田麻里子(SHIMODA Mariko)早稲田大学

「前近代カンボジア上座部仏教寺院におけるシーマー石の変遷とその歴史的背景:考古学的視点からのアプローチ」

“The Evolution of Sīmā Stones in Pre-Modern Cambodian Theravāda Buddhist Temples: An Archaeological Perspective on Historical Context”

発表要旨は、こちら


11:00~11:50 発表⑧

千葉徹大(CHIBA Tetta)東京大学大学院

「カンボジアの医療史と社会制度分析」

“The History of Medicine and Analysis of Social Systems in Cambodia”

発表要旨は、こちら


11:50~13:00 昼休憩


13:00~13:50 発表⑨

古川はるな(FURUKAWA Haruna)常葉大学

「カンボジアにおける音楽教育の実践と展望-プノンペンと地方での取り組みから」

“Practice and Perspectives of Music Education in Cambodia: From Initiatives in Phnom Penh and Rural Areas”

発表要旨は、こちら


14:00~17:00 パネル「カンボジアにおける少数民族研究の現在」

“Multi-ethnic Cambodia: Alternative Perspectives on Its Society”

要旨は、こちら


14:00~14:05 趣旨説明

松井生子(MATSUI Naruko) 日本女子大学

 

14:05~14:25 発表 (1)

松井生子(MATSUI Naruko) 日本女子大学

「カンボジアの少数民族研究:歴史的視点と現在の動向」

“Research on Ethnic Minorities in Cambodia: Past Insights and Present Trends”


14:25~14:45 発表 (2) 【オンライン】

山﨑寿美子(YAMAZAKI Sumiko) 愛国学園大学

「カンボジア北東部のラオ人の民族関係と社会変容」

“Ethnic Relations and Social Change among the Lao People in Northeastern Cambodia”


14:45~15:05 発表 (3)

石橋弘之(ISHIBASHI Hiroyuki) 室蘭工業大学

「カンボジア西部に暮らすモン・クメール系ペアル語派の人々とクメール社会との接点」

“Mon-Khmer Pearic Group and Their Contact with Khmer Society in Western Cambodia”

 

15:05~15:15 休憩 


15:15~15:30 発表 (4) 

吉本康子(YOSHIMOTO Yasuko) 立命館大学

「カンボジアの「チャム」と言語使用の実態:プノンペン周辺における短期調査を通して」

“The Current Language Use of Cham in Cambodia, Based on Short-term Research around Phnom Penh”


15:30~15:50 発表 (5)

遠藤正之(ENDO Masayuki) 立教大学

「カンボジアにおけるマレー系住民」

“The Malay Population in Cambodia”


15:50~16:10 発表 (6)

神田真紀子(KANDA Makiko) 東京外国語大学

「ベトナム語出版物からみた植民地期カンボジアの移住者の諸相」

“Various Aspects of Migrants in Colonial Cambodia through Analysis of Vietnamese Publications”


16:20~17:00 質疑応答


発表要旨(1)

 ター・スレイヌット(THA Sreynuth)在カンボジア日本国大使館【オンライン】

「現在のパイリンのタン・ユー日傘とチェンマイのボー・サーン日傘(2022年8月~9月)」

“Presently of Tang Yu Umbrella in Pailin and Bo Sang Umbrella in Chiang Mai (August-September 2022)”

(発表要旨)

クメールの古い歌、伝統舞踊、文学小説などにタン・ユー日傘とコーラ人がカンボジアに現れたことを示しています。 東南アジア本土では、多くの文化、習慣、伝統が非常に似ています。 タン・ユー日傘に関しては、タイでもボー・サン日傘と似ている傘は、チェンマイでは非常に有名で、海外でも有名であり、チェンマイのシンボルともなっています。チェンマイのボー・サン日傘とパイリン州のタン・ユー日傘の違い、及びその歴史についての研究の目的です。まとめは、パイリンでは現在、タン・ユー日傘は作られておらず、タン・ユー日傘を使用するコーラ人も見つけいません。パイリン州の伝統舞踊のみタン・ユー日傘が使用されています。 チェンマイのボーサン日傘は社会が発展したとはいえ、日差しや雨を防ぐために日常生活でその傘を使用することは少なくなったが、ボーサン日傘は今でも日常生活の中で他の方向で活躍して、輸出向けの工業生産も行われています。


発表要旨(2)

 國分元太(KOKUBU Genta)東京理科大学

「仏領期カンボジアにおける鉄筋コンクリート造屋根付き市場の研究:S.I.D.E.C.社による構法の標準化と熱帯環境への適応」

“Covered Market in Colonial Cambodia: Standardization and Climatic Adaptation of Reinforced Concrete by S.I.D.E.C.”

(発表要旨)

本発表では、1920~30年代の仏領期カンボジアにおいて建設された鉄筋コンクリート造の屋根付き市場に焦点を当て、フランス系建設会社S.I.D.E.C.(Société Indochinoise d'Études et de Constructions)による構法的特徴とその背景を明らかにする。プノンペン、バッタンバン、カンポット、コンポンチャムなど主要都市に展開された市場建築では、標準化されたプレキャスト・コンクリート部材を用いた建設の合理化と、熱帯気候への適応が図られていた。現地調査およびアーカイブ資料に基づき、それらの構法はカンボジア単独の事例にとどまらず、ベトナムにおける同社の市場プロジェクトとも連続した試みであったことを示す。本研究はカンボジアの近代建築史、特に植民地期の建築史を、企業史、鉄筋コンクリート技術史の観点から捉えなおす視座を示すものである。


発表要旨(3)

 岡田知子(OKADA Tomoko)東京外国語大学

「1980年代社会主義政権下のカンボジアにおける地下写本小説」

“Unofficial Entertainment Fiction After Pol Pot Regime in Cambodia”

(発表要旨)

1975年から1979年のポル・ポト政権下では、中国の文化大革命に倣った極端な共産主義が推進され、知識人や書物は害悪をもたらすものとして排除された。同政権崩壊後はソ連・ベトナム支援型社会主義政権が1990年初頭まで続いた。厳しい言論統制の下、文学作品は社会主義リアリズムの手法で書かれ国営印刷所で出版された。この時期に市井の人びとの文化的構築物である読書行為がどのように始まり、発展していったかを文学社会学的な視点を踏まえて考察する。研究対象として1980年代に流通していた地下写本小説を蒐集、内容を精査し、また当時の関係者へのインタビューをもとに文学活動を明らかにするのが目的である。今回は2024年8月に行ったプノンペンでの調査で得た結果の内容(収集できた写本小説原本の提示、また、写本小説の作家、写本をした人、読者へのインタビューなど)について紹介する。

発表要旨(4)

 下條尚志(SHIMOJO Hisashi)神戸大学

「水上集落の形成と日常政治:トンレサップ湖南部の湖畔から考えるカンボジア・ベトナムの間隙」

“The Creation and Everyday Politics of Floating Settlements on Water: The Elusive Space between the Cambodian and Vietnamese States Seen from the Southern Tonle Sap Lakeshore”

(発表要旨)

発表者はメコンデルタ多民族混淆社会で調査を行ってきたが、それと連続性のある社会として2023年以来トンレサップ湖南部の水上集落に着目し始めた。当初はベトナムと関連の深い住民を主な対象に集落の理解を試みたが、水上民への調査を行うなかでその前提を再考する必要性を理解した。理由は①現/元水上民はベトナム系住民に限られないこと、②水上民は元々の住民に加えポル・ポト政権崩壊後の1979年以降にカンボジア、ベトナム各地から移住した者がいること、③水上生活をやめ陸地で暮らし始めた住民にはクメールやチャムが比較的多く見られることが挙げられる。

近年カンボジアでは、漁区システム廃止や漁獲量増加に伴う環境変化と、国家による陸地への定住化政策により水上民は生活の変化を迫られている。他方で、1979年以降のベトナムからの移住者の多くは無国籍状態であり、しばしば「ベトナム人」と括られ、強制排除の対象にはなるが、定住化政策の埒外に置かれている。本発表では、水上集落の形成過程とそこでの日常生活のなかで見える政治を検討する。


発表要旨(5)

 <高校生による発表>
尾上大和(ONOE Yamato)宮城県仙台二華高等学校
「カンボジアにおけるマイクロファイナンス活用の現状と課題」
“Current Status and Challenges of Microfinance Utilization in Cambodia”

(発表要旨)
本研究ではカンボジア農村社会におけるマイクロファイナンス利用の現状と課題を調査した。シェムリアップ州アンコールクラウ村、プラサート・チャッ村、トンレサップ湖北部の水上集落、合わせて49軒にインタビュー調査を行ったところ約70%の家庭がマイクロファイナンスを利用していた。また、マイクロファイナンス利用の理由を質問したと結果、利用した家庭のうち約85%がマイクロファイナンス本来の目的である、貧困脱出のための事業開始資金への融資以外の目的で利用しており、またマイクロファイナンス側も経営方針を貧困削減から営利追及に変更しており、カンボジア農村社会においてはマイクロファイナンス本来の役割が失われている、という課題があることがわかった。また、マイクロファイナンスを利用した家庭の約半数は世界銀行が定める「極度に貧しい状態」で生活しており、返済能力がない家庭もマイクロファイナンスを利用している、という課題も存在する。

発表要旨(6)

 <高校生によるグループ発表>

細野景叶・近藤修真(HOSONO Keito, KONDOU Syuma)成城高等学校

「スロラウチュルム村における地雷撤去による土地再生」

“Land Reclamation Through Demining in the Village of Slorau Troum”

(発表要旨)

現在カンボジアは内戦時からの復興に力を入れている。その中で、米の生産量を比較すると 18 年で約 2.8 倍に増加している。また、一人当たりの耕地面積も 1.5 倍ほどに増えている。それは 2000 年代以降の諸外国からの援助によってインフラが急速に整備されているからである。一方で、ポル・ポト政権崩壊後の内戦時に埋められた 400~600 万もの地雷は撤去がすすんでいるものの現在でもまだ存在している。このことにより、有効活用できない土地が存在しているのである。そこで私たちは土地を有効活用するために地雷撤去による土地所有と稲作を中心とする農業生産性及び住民の生活の変化について明らかにする必要があったため、私たちは日本地雷処理を支援する会(Japan Mine Action Service:JMAS)の支援を受けたバンテアイメンチェイ州スロラウチュルム村で農業を営む農家に対して月収や耕地面積、学歴、JMAS の支援の効果などの聞き取り調査を行った。その結果、JMAS の支援による収入の増加や農業や生活向上へのさらなる投資が期待できる。一方で、学歴と月収に相関がなく、耕地面積と月収にも相関がないことから、農家たちが言う月収には確実性がない可能性も否定できない。それは、数字の計算などの十分な教育の不足の影響もあるため、子供のみならず、大人への基礎的な教育の充実が必要である。


発表要旨(7)

下田麻里子(SHIMODA Mariko)早稲田大学

「前近代カンボジア上座部仏教寺院におけるシーマー石の変遷とその歴史的背景:考古学的視点からのアプローチ」
“The Evolution of Sīmā Stones in Pre-Modern Cambodian Theravāda Buddhist Temples: An Archaeological Perspective on Historical Context”


(発表要旨)
本発表の目的は、13世紀から16世紀におけるシーマー石の変遷を明らかにすることで、カンボジア上座部仏教文化における連続性や画期、およびその歴史的背景に迫ろうとするものである。
シーマー(結界)石は、仏教寺院において聖域と俗世界を区別するための標識として用いられ、その形態、図像、設置方法は時期によって変化する。彫像などと同じく、各時期の思想や文化的影響を反映しやすいシーマー石は、仏教寺院の年代や仏教文化の変遷を検討する上でも重要な指標となる。しかし、カンボジアで上座部仏教が受容・形成される当該時期に関するシーマー石の記述は断片的であり、体系的研究はこれまで行われていない。
本発表では、先行研究で触れられてきたアンコール地域のシーマー石に加え、15世紀から16世紀の王都があったとされるトゥール・バサンースレイ・サントー地域やロンヴェークーウドン地域、そして地方寺院の事例も加え、形態による分類を行い、図像、サイズといった多角的な検討を加えることで、カンボジアの13世紀から16世紀におけるシーマー石編年案を提示する。また、発表者らによる最新の発掘調査成果を踏まえ、シーマー石設置方法の変化から結界構築に関する概念の変化についても検討する。最終的にはこれらに基づいて各時期や地域における上座部仏教文化の連続性と画期について考察する。結論として、シーマー石の変遷が前近代カンボジアの上座部仏教文化の進展とどのように関係しているかを示し、その歴史的背景を明らかにすることを目指す。

発表要旨(8)

千葉徹大(CHIBA Tetta)東京大学大学院

「カンボジアの医療史と社会制度分析」
 “The History of Medicine and Analysis of Social Systems in Cambodia”

(発表要旨)
本研究は、古代から現代に渡るカンボジア王国の医療史の整理を行い、そこに関わる社会制度の分析を行い、医療と社会制度の関係の理解を深めたうえで、現代のカンボジア医療における課題解明を目的とするものである。(本研究は、発表者が東京大学経済学部における卒業論文の研究を、現在、同大学院経済学研究科における修士課程に在籍し、最終的には修士論文として完成させるために、その内容をさらに深めている段階のものです。本研究の構想発表によって、参列者の皆様方様より貴重なご意見をいただけますと大変幸いです。)まず、医療史については、国内外のさまざまな文献資料を用いて、ベトナムやラオスなどの関わりの深い国家との比較を交えつつ、1.伝統医療の形成、2.帝国医療としての西洋医療の流入、3.ポル=ポト政権期の医者虐殺による医療崩壊、4.ポル=ポト政権以後の医療復興、という4つの時代区分としてまとめる。ここでは、カンボジア医療体制における、伝統医療の存在の大きさと安定性、西洋医療のポル=ポト政権を機転とする盛衰を描く。そして、ID Poorなどのように、そのうち現代の医療に関わる社会制度を統計データなどの一次資料を用いて、統計学や開発経済学的な分析を行い、カンボジアにおける医療の実態とその課題を解明する。ここでは、ID Poorに関する統計データの問題点から貧困層への医療支援が十分に機能していない可能性を示唆するなど、カンボジアにおける医療と貧困・信頼・政策などのさまざまな要因との深い関わり、そこに存在する今後の医療課題の解明と考察を行う。
 

発表要旨(9)

古川はるな(FURUKAWA Haruna)常葉大学

「カンボジアにおける音楽教育の実践と展望-プノンペンと地方での取り組みから」
“Practice and Perspectives of Music Education in Cambodia: From Initiatives in Phnom Penh and Rural Areas”

(発表要旨)
本発表では、カンボジアにおける音楽教育および音楽鑑賞の実践内容とその経過について報告する。発表者は2016年より継続的に、プノンペンのドン・ボスコ・スクールにおいて音楽教育に携わってきた。現時点では、同校の児童生徒を研究対象としてではなく教育対象として捉えているが、これまでの実践を通して音感、リズム感、聴取感覚などに一定の傾向が見られたこと、また、教育の経過とともにこれらの感覚に変化が生じていることが認められた。また、同校との比較として地方の学校やコミュニティにおいても音楽鑑賞を実施したところ、鑑賞者の反応や態度に特徴的な傾向が見受けられた。こうした実践の内容とそこから得られた知見について報告するとともに、これらの結果をカンボジアにおける社会的・文化的な文脈の中に位置付け、音や音楽がカンボジアの人々にもたらし得る将来性と課題について考察を行う。
 

パネル発表要旨

 パネル「カンボジアにおける少数民族研究の現在」
“Multi-ethnic Cambodia: Alternative Perspectives on Its Society”

(要旨)
カンボジアでは1990年代まで少数民族に関する研究が少なかったが、2000年代から現地の史料や長期フィールドワークに基づく研究が増加し、現在、研究に一定の蓄積が見られるようになっている。だが、少数民族の人々の実際の暮らしやクメール人との関係などはまだ多くの人に知られていないのが実情ではないだろうか。本パネルはカンボジアの少数民族等に関わってきた研究者が登壇し、それらの人々の歴史や現在の状況を示すと同時に、カンボジア社会を見る際のオルタナティブな視点を提示することをめざしている。
パネルの構成は、まず松井報告がカンボジアの少数民族研究の動向、過去の政策の推移と各民族への影響について包括的に論じ、その後に民族的背景を持つ人々についての個別の報告に移る。北東部のラオ人に関する山﨑報告は、彼らの語りや地名の特徴等からクメール人との交流を含めた同地域の民族的な特色を概観すると共に、今日の生活世界の変化を考察する。続く石橋報告はカルダモン山脈のペアル語派の人々の視点から、彼らとクメール人の接点および関係について考える。吉本報告はカンボジアに居住するチャム人の言語状況やエスニシティ、ベトナムのチャム人の事例との異同について取り上げ、遠藤報告はチャム人を含むカンボジアへのマレー系住民の移住の歴史について考察する。最後の神田報告は植民地期に発行されたベトナム語出版物を中心に、ベトナム人移民1世を主とする当事者の視点から彼らの生活と問題意識を明らかにする。
 

2025年3月27日

第19回日本カンボジア研究会(7/26, 27)開催案内および発表者募集

2025年度の日本カンボジア研究会は、以下の日程で対面とオンラインのハイブリッド形式にて開催いたします。 

  

日程:2025726日(土)、27日(日) 

開催形態:対面をメインとするハイブリッド(発表は原則対面のみ) 

開催場所:京都大学東南アジア地域研究研究所 稲盛財団記念会館3F中会議室 

https://kyoto.cseas.kyoto-u.ac.jp/access/ 

  

つきましては、これから発表者の募集を行います。 

エントリーを希望される方は、以下の要領で期日までにお申し込みいただくようお願いいたします。 

  

この研究会は、以前よりアカデミアの枠にこだわらず幅広く発表者を募っています。 

カンボジアに関する話題であれば、領域やアプローチは問いません。 

また、研究者や院生・学部生だけでなく、在野の方からも広く発表を受け付けています。 

身近に、最近カンボジアについて研究を始めた方などいましたら、ぜひお気軽に発表をおすすめください。 

 

発表時間は、発表40分+質疑20分=60分を基本とします(発表人数等に応じて変更することがあります)。 

  

発表を希望される方は、【511日(日)】までに、お申し込み用のフォームに必要事項を入力して送信してください。 

回答のコピーの送信をもって申し込み完了とさせていただきます。 

 

発表申込URL https://forms.gle/MnWSE11wPNPFn9z77 

  

転送歓迎です。よろしくお願いいたします。 

問い合わせ先 cambodianstudies2025@gmail.com 

19回研究会運営担当:石橋弘之、千田沙也加、山田裕史、吉田尚史 


2025年1月23日

シンポジウム「バイヨンの謎の解明とその保存をめぐって」

このたび、日本国政府アンコール遺跡救済チーム(JSA)結成30年を迎え、下記の通り国際シンポジウムを開催いたします。
皆様のご来場を心よりお待ちしております。

バイヨンの謎を解明し、その保存が希望となることを願って、JSA/JASA は 30年挑戦を続けてきた。バイヨンは謎に満ちている。その謎は深く、そして魅力的である。バイヨンの尊顔とは何か。バイヨンの複雑な空間構成と多様な形態は度重なる増改築と、まさにパンテオンと呼ぶべき神々の重層的な複合によるだろうが、その背景に何があったのか。サンボー・プレイ・クック、プレア・ヴィヘア、バンテアイ・スレイ、バプーオン、アンコール・ワット等、クメール都市・建築史のメルクマールとなる遺跡群の発展の系譜はクメール建築史の正統の道と考えられるが、12世紀後半になって突然のように出現したバイヨンはそれまでの歴史において類をみない異端であった。このバイヨンの創成はクメールの歴史において何を意味するのであろうか。従来、クメール・アンコール建築史研究は美術、様式史研究に重点が置かれてきたため、建築の設計・配置方法や基壇基礎の版築工法、建築構造については未知の分野が多く残されていた。私たち JSA/JASA はアンコール研究および保存修復に着手して以来、本年で30周年を迎えたが、先に挙げたバイヨンの謎の背景にある建築の設計・配置方法と基壇基礎の版築工法にこそ、インド文明の影響を受けつつも伝統と地質、気候などの自然風土に根差した独自の建築都市文化をクメールの祖先たちが築いてきたことの秘密があること、そしてその長い道のりの集大成であり、そこからの新たな飛躍の象徴がバイヨンの創成であったと考えている。そしてバイヨンに象徴されるアンコールの謎と希望を、我々 JSA/JASA はアンコールファミリーの一員として、様々な分野において今まさに危機に瀕している世界にむけて発信し、共に前進することを願っている。
中川武(JSA団長・JASA共同代表)

日  時:2025年2月1日(土) 15:00-18:00(開場14:30)
会  場:早稲田大学大隈記念講堂 小講堂
参加費:無料

プログラム:
開会のことば
 中川武(JSA団長・JASA共同代表)
来賓ご挨拶
1.主旨説明:JSA/JASAの30年のプロジェクト概要
 中川武(JSA団長・JASA共同代表)
2.基調講演1 : バイヨンに関する伝承(英語)
 Ang Choulean(カンボジア王立芸術大学)
3.基調講演2 : JSA/JASA30年の活動の評価と意義(英語)
 Mounir Bouchenaki(ICC-Angkor/SPKアドホック専門家)
4.各分野報告:
 バイヨンの考古学
  田畑幸嗣(早稲田大学)
 バイヨンの3Dスキャン
  大石岳史(東京大学)
 アンコール遺跡の微生物
  片山葉子(東京文化財研究所)、Gu Ji-Dong(広東イスラエル工科学院)
 バイヨンの保存科学と浅浮き彫りの保存修復計画
  河﨑衣美(奈良県立橿原考古学研究所)、松井敏也(筑波大学)
 アンコール地域の地盤工学とバイヨン中央塔保存修復工事計画
  岩崎好規(地域地盤環境研究所)
 バイヨンの建築構造学と中央塔上部構造の対策
  山田俊亮(安田女子大学)
 バイヨン本尊仏のレプリカ模刻
  矢野健一郎(矢野造形技法研究所)
5.討論とまとめ : JSA/JASAのこれまでの活動に関する評価と今後の課題(日英)
 Mounir Bouchenaki(ICC-Angkor/SPKアドホック専門家)、中川武(JSA団長・JASA共同代表)
閉会のことば
 中川武(JSA団長・JASA共同代表)
司会進行
 小岩正樹(早稲田大学)

JSA/JASA(日本国政府アンコール遺跡救済チーム + APSARA)、UNESCO
共催:早稲田大学理工学術院総合研究所
後援:NPO法人 GREEN WIND ASIA


なお、ご参加をご検討いただけます方は、誠に恐れ入りますが、事前に、以下のURLよりご出欠のご連絡を賜りますようお願い申し上げます。
出欠回答URL:


問い合わせ先:早稲田大学創造理工学部建築学科建築史系小岩正樹研究室
〒169-8555 東京都新宿区大久保3丁目4-1
早稲田大学(西早稲田キャンパス)55号館N棟8階10号室
Tel:03-5286-3275
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