千葉徹大(CHIBA Tetta)東京大学大学院
「カンボジアの医療史と社会制度分析」
“The History of Medicine and Analysis of Social Systems in Cambodia”
(発表要旨)
本研究は、古代から現代に渡るカンボジア王国の医療史の整理を行い、そこに関わる社会制度の分析を行い、医療と社会制度の関係の理解を深めたうえで、現代のカンボジア医療における課題解明を目的とするものである。(本研究は、発表者が東京大学経済学部における卒業論文の研究を、現在、同大学院経済学研究科における修士課程に在籍し、最終的には修士論文として完成させるために、その内容をさらに深めている段階のものです。本研究の構想発表によって、参列者の皆様方様より貴重なご意見をいただけますと大変幸いです。)まず、医療史については、国内外のさまざまな文献資料を用いて、ベトナムやラオスなどの関わりの深い国家との比較を交えつつ、1.伝統医療の形成、2.帝国医療としての西洋医療の流入、3.ポル=ポト政権期の医者虐殺による医療崩壊、4.ポル=ポト政権以後の医療復興、という4つの時代区分としてまとめる。ここでは、カンボジア医療体制における、伝統医療の存在の大きさと安定性、西洋医療のポル=ポト政権を機転とする盛衰を描く。そして、ID Poorなどのように、そのうち現代の医療に関わる社会制度を統計データなどの一次資料を用いて、統計学や開発経済学的な分析を行い、カンボジアにおける医療の実態とその課題を解明する。ここでは、ID Poorに関する統計データの問題点から貧困層への医療支援が十分に機能していない可能性を示唆するなど、カンボジアにおける医療と貧困・信頼・政策などのさまざまな要因との深い関わり、そこに存在する今後の医療課題の解明と考察を行う。