2025年6月9日

発表要旨(3)

 岡田知子(OKADA Tomoko)東京外国語大学

「1980年代社会主義政権下のカンボジアにおける地下写本小説」

“Unofficial Entertainment Fiction After Pol Pot Regime in Cambodia”

(発表要旨)

1975年から1979年のポル・ポト政権下では、中国の文化大革命に倣った極端な共産主義が推進され、知識人や書物は害悪をもたらすものとして排除された。同政権崩壊後はソ連・ベトナム支援型社会主義政権が1990年初頭まで続いた。厳しい言論統制の下、文学作品は社会主義リアリズムの手法で書かれ国営印刷所で出版された。この時期に市井の人びとの文化的構築物である読書行為がどのように始まり、発展していったかを文学社会学的な視点を踏まえて考察する。研究対象として1980年代に流通していた地下写本小説を蒐集、内容を精査し、また当時の関係者へのインタビューをもとに文学活動を明らかにするのが目的である。今回は2024年8月に行ったプノンペンでの調査で得た結果の内容(収集できた写本小説原本の提示、また、写本小説の作家、写本をした人、読者へのインタビューなど)について紹介する。