2016年5月24日

6/11 Abstract(1)

発表要旨(1) POEUNG Sokkech

「カンボジア新興財閥と外国直接投資(FDI)-90年代以降の土着財閥と外資(中国資本)の関係に焦点を当てて-」
“A study on the Cambodian emerging tycoons and Foreign direct investment (Chinese capital) since the early 1990s”

カンボジアは1991年のパリ和平協定の締結により、長く続いたベトナム軍の撤退と同時に西側からの経済制裁が解除され、続く1993年に国連カンボジア暫定統治機構による第一回民主的選挙が成功し、本格的に市場経済へ移行し始めた。1994年に投資法制定後、人民党政府は経済成長優先策を取り、外資誘致優先政策を推進してきた。1990年代にはカンボジアは輸出志向型工業化(FDI)政策をとり、経済成長はそれに深く依存し、特に中国(台湾・香港を含む)からの投資が大きい。2000年代以降のカンボジアは高い経済成長(過去十年間の年率平均成長率は7.6%)を達成したが、この高い経済成長の多くは、外資からであり、主に低賃金の繊維縫製産業、観光業、建設業などが多くの割合を占めている。多くのFDIは技術移転型よりも安価な労働力、特恵関税、輸出向けにのみ集中する傾向にある。外資による急速な経済開発はカンボジア経済成長にある程度貢献してきたが、普通の人々の生活向上には直結せず、政府のエリート・権力者の利権拡大や汚職を悪化させている側面もある。その為、将来的にはFDIに関係する政策の透明性と「良き統治」に基付いた適切な施策が必要である。本研究は、1990年代以降のカンボジア土着財閥とFDIの関係を調べ、特に中国からのFDIを注目する。まずFDIに対する政策をレビューし、最後には外資による真の受益者は誰なのかを考究する。