2017年5月22日

6/24 Abstract 4

笹川秀夫
「近代仏教の時代のすれちがい:戦前、戦中の日本で刊行された仏教雑誌、仏教関連書籍にみるカンボジア関連記事」

 本報告では、第二次世界大戦前から戦時中の日本で刊行された仏教雑誌の記事と、東南アジアの仏教を扱う書籍を対象に、カンボジアがどのように語られたか、あるいは語りえなかったかを検討する。まず、20世紀初頭からのカンボジア仏教界にみられた変化や改革を概観し、日本と同様にカンボジアも近代仏教と呼びうる時代を迎えていたことを把握する。つづいて、戦前の仏教雑誌に掲載されたカンボジア関連の記事を検討し、フランスの学術界とつながりを持っていた人物が、プノンペンの王立図書館や仏教研究所における活動を把握していたことを確認する。さらに、戦時下の日本で刊行された雑誌や書籍の分析から、記事の内容がアンコール遺跡に極端に偏重し、同時代のカンボジアに対する興味を失ったことを指摘し、日本とカンボジアの仏教界が交流や対話を成し遂げられなかったという問題を検討したい。