國分元太(KOKUBU Genta)東京理科大学
「仏領期カンボジアにおける鉄筋コンクリート造屋根付き市場の研究:S.I.D.E.C.社による構法の標準化と熱帯環境への適応」
“Covered Market in Colonial Cambodia: Standardization and Climatic Adaptation of Reinforced Concrete by S.I.D.E.C.”
(発表要旨)
本発表では、1920~30年代の仏領期カンボジアにおいて建設された鉄筋コンクリート造の屋根付き市場に焦点を当て、フランス系建設会社S.I.D.E.C.(Société Indochinoise d'Études et de Constructions)による構法的特徴とその背景を明らかにする。プノンペン、バッタンバン、カンポット、コンポンチャムなど主要都市に展開された市場建築では、標準化されたプレキャスト・コンクリート部材を用いた建設の合理化と、熱帯気候への適応が図られていた。現地調査およびアーカイブ資料に基づき、それらの構法はカンボジア単独の事例にとどまらず、ベトナムにおける同社の市場プロジェクトとも連続した試みであったことを示す。本研究はカンボジアの近代建築史、特に植民地期の建築史を、企業史、鉄筋コンクリート技術史の観点から捉えなおす視座を示すものである。